●「続・知られざる日豪関係」(786)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 気のきかない汗にまみれた海兵隊員には、この男は別世界から来た人 ── 静かな夏のホテルの客人かとも見えたが、彼がマッケンジー中佐の司令部へ向うのを見てもう一度びっくりした。
 新来の客はウォルター・H・ブルックスバンクで、オーストラリア海軍情報部長の民間人補佐官のポストにあり、有能な情報マンとされていた。
 彼は同じ情報部にいた弟の<B2号>と区別して<B1号>と呼ばれていた。
 沿岸監視活動については、発足の時からかかわっていた。
 ブルックスバンクはニュ―ヘブリデス諸島で通信体系の混線を調整していたが、ガダルカナルでの状況を調査にやって来たのだった。