●「続・知られざる日豪関係」(794)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 翌七日の午後、グランパスは錨をあげ、ブリスベーン港からすべり出ると、北東の海上へ姿を消した。
 艦長のJ・R・クレイグ中佐は親切な軍人で、出航後の六日間で監視員たちは潜水艦の生活がいかなるものかを十分に学んだ。
 暑熱、溶けたアイスクリーム、もうろうとしてくる頭、親しい交わり、そして日本の駆逐艦が投下した爆雷など ── だがウォデルにとって最大の発見は、乗組員たちがバックギャモン(西洋すごろく)の遊び方を知らないということだった。
 そこで彼は退屈な航海中に何時間もゲームのやり方を伝授してやったものだ。
 一〇月一三日午前五時、グランパス号はベララベラの北西海岸に潜水したまま停止すると、クレイグ中佐は潜望鏡で岸辺の状況を観察しはじめた。