●「続・知られざる日豪関係」(798)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 海は油を流したように静かであったが、潜水艦は黒い太平洋のゆるやかな重いうねりに上下した。
 乗員は後部ハッチをあけ、二つのゴムボートを引き出したてふくらませると艦の舷側におろした。
 一種のバケツリレー方式で荷物が急いで上げられ、ボートに積みこまれた。
 すべりやすい傾いた甲板の上での作業は楽ではなかった。
 あわてて投げた食料品の箱が、二隻目のボートの横腹に穴をあけてしまったので気休めに粘着テープでその穴をふさいだ。
 折りたたみ式のカヌーがおろされると、ジョスリンが飛び移った。
 彼はひもを腰にまきつけると、それを第一のゴムボートにむすびつけ、第一のボートが第二のボートを引っ張れるようにした。