●「続・知られざる日豪関係」(805)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 川から半マイル離れた地点に、彼らは無線機を設置するのにうってつけな高さ三〇〇フィートばかりの丘を見つけ、そこにカムフラージュした差しかけ小屋を作り、農園の物置から持ってきたトタン板でおおった。
 次には送信機、充電装置その他を運びあげる重労働が待っていた。
 いつもだと一二人の現住民人夫を使ってやる仕事なのだが、誰一人住民が見つからない今は二人だけでやりとげるほかなかった。
 一〇月二二日、やっとKEN局に送信する準備がととのった。
 ジョスリンは送信機のスイッチを入れた時、この上ない満足感を覚えた。
 ところが送信機が動かなくなって、たちまち挫折感を味わう破目になった。