●「続・知られざる日豪関係」(808)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 一〇月一九日の夜、グランパスはふたたびチョイセル島の北岸に向い、二〇日の午前一二時三四分、クレイグはナシプシ岬一マイル沖に舞い戻った。
 乗組員たちは手慣れたものだった。
 二〇分間でボートが下ろされ荷物が積みこまれた。
 シートンがカヌーを漕ぎ、ウォデルは第二のボートに乗ってしんがりを引き受けた。
 一二時五四分二人は舷側を離れ、グランパスが夜の闇に消えていくのを見守った。
 静かに岸に向って漕ぎながら、ウォデルはぼんやりと≪コルナにおけるジョン・ムーア卿の埋葬≫の一節を思い出していた。