「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”新しい目と耳”
一〇月一九日の夜、グランパスはふたたびチョイセル島の北岸に向い、二〇日の午前一二時三四分、クレイグはナシプシ岬一マイル沖に舞い戻った。
乗組員たちは手慣れたものだった。
二〇分間でボートが下ろされ荷物が積みこまれた。
シートンがカヌーを漕ぎ、ウォデルは第二のボートに乗ってしんがりを引き受けた。
一二時五四分二人は舷側を離れ、グランパスが夜の闇に消えていくのを見守った。
静かに岸に向って漕ぎながら、ウォデルはぼんやりと≪コルナにおけるジョン・ムーア卿の埋葬≫の一節を思い出していた。