●「続・知られざる日豪関係」(810)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 他によい解決法を考える余裕はなかった。
 二人はナイフと銃剣で、空気がすっかりぬけるまでボートをズタズタに切り裂いた。 
 それからぐにゃぐにゃになった残骸もひっぱっていって隠すと、ちょうどその時おなじみの川西飛行艇が朝の哨戒飛行に現われたのであった。
 疲労のあまり朝食もとらず、彼らは浜辺をふちどる茂みの中に倒れこんだ。
 まもなく雨がふりはじめたので、元気をふるいおこしてやっと小さな葉ぶきの小屋をつくり上げた。
 浜辺を歩いていたベニという現住民がたまたま彼らに出会ったのは、その時だった。
 偶然にもベニは昔ウォデルが島に英国の権威を確立しようとしていたころからの顔見知りだった。