●「続・知られざる日豪関係」(814)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”新しい目と耳”
だが今までのところではこの島で敵にせよ味方にせよ誰一人も見かけていないのだった。
彼らがこの問題で頭を悩ましていると、突然二人の現住民がカヌーに乗って、すぐ近くを通りすぎたので、ジョスリンは思わず声をかけた。
すると彼らはちらりとジョスリンを眺め、乱暴な漕ぎ方で去ってしまった。
最悪の事態を恐れて、監視員たちはすばやく携帯ぶとんをまとめ、奥地に入る準備をした。
二番目のカヌーが近づいてくるのを見つけた時は、もう立ち去る準備ができていた。
双眼鏡の焦点をあわせると、ジョスリンは数人の漕ぎ手と一人の現住民の乗客を見分けた。
たしかに日本人ではない。
二人はいちかばちかで声をかけてみた。