●「続・知られざる日豪関係」(815)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 乗客はサイラス・レザツニという六マイル南にあるパラマタ村の酋長であった。
 敵意どころか、きわめて友好的で、情報をたくさんしゃべった。
「はい、日本人はこの島にいます・・・・・・無線機をもって・・・・・・すぐ北のイリンギラです」
 現住民たちは日本兵が”軍艦”(あきらかにグランパス号が出会った駆逐艦だ)から降りて上陸するのを見ていた。
 だからジョスリンとキーナンが、島人たちに知られずに一〇日も海岸にいたのを知って、サイラスはすっかりおどろいてしまった。
 どうしてこんなことができるんだろう、とふしぎがる酋長にジョスリンは潜水艦の秘密をしゃべりたくなったが、ぐっと我慢した。