●「続・知られざる日豪関係」(819)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 百武中将自身も九日に出撃した駆逐艦に便乗してガダルカナルに向った。
 ブインの背後の丘の上ではポール・メイスンが、ショートランド泊地を埋める日本の大船団が出て行くのを監視していた。
 その二カ月前までは彼はまだアマチュアで、「二本煙突の巡洋艦一」とか「前マストの近くに大きな構築物、後部に人目をひく塔のある船一隻」というような描写を付した通信を送っていた。
 その後エリック・フェルトが送ってくれた鉛筆書きの艦型図を覚えこんだので、今や彼がKEN局に送る描写は次のようにプロ並みの正確性をほこるようになっていた。


 ブイン地区より見える艦船、巡洋艦那智型三、加古型一、川内型一、竜田型一。
 駆逐艦一七、貨物船一三、タンカー一、不明三 ── 大型水上機母艦かも知れず。
 一一〇〇竜田型巡洋艦一および駆逐艦五隻南東へ迎えり。