●「続・知られざる日豪関係」(825)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 新しい待避壕は飛行場から二〇〇ヤード離れており、二〇〇ヤードばかり安全性を増したわけだが、バッテリーによる電灯と、椅子にする荷物箱もあるという快適さを備えていた。
 正確にいえば、平穏な生活とは言えないのだが、一〇月の終り頃は一応の危機が去ってアメリカ軍はほっと安心して緊張を解いたのも事実だ。
 だが、ガダルカナルの日本軍は決して島の奪取をあきらめたのではなかった。
 食糧、弾薬の不足、それに医師の手当ても受けられない苦境にありながら、彼らはなお武士道精神を堅持した勇猛果敢なサムライであった。
 二万三〇〇〇人に及ぶ日本軍兵士は、”東京急行”が運ぶ増援部隊と補給を待って、攻撃を再開しようとしていた。