●「続・知られざる日豪関係」(826)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 6 実力行使


 運悪く沿岸監視網の外側に放り出された一人の男がいた。
 それは海兵隊第二三一哨戒爆撃飛行中隊のデイル・M・レスリー少尉という若いパイロットだった。
 九月二八日、いつもの偵察飛行から帰る途中、レスリーエスペランス岬上空でゼロ戦の奇襲攻撃をうけた。
 後部射手は即死し、操縦室は炎につつまれて墜落したが、高度七〇〇フィートからパラシュートで脱出、海岸から数百ヤードの海上へ降下したのだった。
 その日の夕方、彼はエスペランス岬から三マイルという日本軍が占拠していたまっただ中のタベアに近い海岸にはいあがる。
 少尉は奥地目ざして歩き出したが、たちまち日本軍の斥候が小道をやって来るのにぶつかり、ぴたりと伏せて彼らが通りすぎるのを眺めていた。