●「続・知られざる日豪関係」(828)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 実力行使


 足音がしたので見あげると、一人の日本兵が目を丸くして彼を見下ろしていた。
 あわてて飛び出すと兵隊は大声で叫び、二人とも走りだした。
 やっと引き離してからレスリーはまた海岸に出て、暗くなるまで隠れ場所を探した。
 今度は倒れたココナツの根と、根にくっついた土が一見ほら穴のようになっているのを見つけ、その中にはいりこんで待つことにした。
 そのうちに誰かが近くにいるような予感がして砂がパラパラとふりかかって来たので、何が起こっているのかとそっとのぞいて見た。
 日本兵の一人が倒れた木の、それも彼の真上に腰かけて夕食をとっているところではないか。
 ほとんど信じられないほどだったが、その日本兵は、アメリカの漫画にでてくるような厚い眼鏡をかけた出っ歯の男だったのである。