●「続・知られざる日豪関係」(831)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 実力行使


 レスリーはカヌーをそこにおいて、ふたたび歩きはじめた。
 助けが近くにあるという思いに胸は高鳴った。
 次の日の昼近く、泥道に足跡が見え、まもなく現住民の村落に着いた。
 彼らは一目見て彼を日本人だと思ったのか、全員が丘の方へ逃げ出した。
 少尉はできるだけだけ大声で「アメリカ人だ!」と叫んだ。
 彼らはそれを信用したわけではなかったが、引き返して来て用心しながら遠くから彼を観察した。
 やっと納得すると、村人は彼をとりまき、笑いかけ、手を握った。
 実際、彼はそのグループ ── 約一五〇人はいただろうか ── の小さな子供までふくむ全員と握手せねばならなかった。