●「続・知られざる日豪関係」(832)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 実力行使


 すっかり疲れていたので、現住民の厚意に甘えて連れて行かれた小屋でアシの寝台にころがり、運ばれた魚や芋で腹を満たした。
 住民の一人は少し英語が話せたが、近くに白人の伝道師がいるから明朝そこへ連れていこうと言ってくれた。
 その伝道師とはガダルカナル南部の臨時監視員を引き受けたばかりのクラーク神父だった。
 ラマダ号がタンガラレから教会グループを救出したあと、一人で留まる決心をしてから、二週間がすぎていた。
 彼は今では南海岸におけるただ一人のヨーロッパ人となっていた。
「わたしは司教と政庁の代りに、あなたがたを世話する」と、神父は現住民たちに短い説教を試みた。