●「続・知られざる日豪関係」(845)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 実力行使


 以上が一一月四日、ディック・ホートンが何の前ぶれもなくラマダ号に乗って現われた時のタンガラレの状況であった。
 彼はイサベル島とルッセル島に漂着したパイロットを拾い上げ、さらにグローとレスリーを拾いに来たのだった。
「神父も一緒にいらいしゃいませんか」ホートンは、何の権限もなかったがのだが一応はこうたずねてみた。
 彼はヴァンデグリフト将軍が望んでいることでもあると付け加えた。
 しかし神父は丁重に断った。
「将軍に伝えて下さい。わたしはあとで行きます。まだここで忙しすぎるほど仕事が残っているのです」
 そこでラマダ号は彼を残して去り、かくてよき羊飼いは狼に対して今までどおり棍棒を振りつづけることになったのである。