●「続・知られざる日豪関係」(846)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 7 “東京急行”を撃滅せよ


 そのころ日本軍を追跡することは、ジャック・リードの念頭にほとんど浮ばなくなっていた。
 彼の主な関心は、いかにして彼らから逃れるか、だけであった。
 何週間も前から日本軍がブーゲンビル北部のポラポラにある彼の隠れ家を襲って捕えるため、捜索を開始したとう噂を聞いていたが、一一月に入ると、その危険が身に迫ったように思えた。
 高度二五〇〇フィートのソラケンという小さな村落に双眼鏡の焦点を合わせると、錨をおろしたばかりの日本軍舟艇から、一〇〇人ばかり兵力が上陸するのが見えた。
 一点だけを除いて今までと変わった条件はなかった。
 日本軍はしばしばブカ水道を調査していたし、彼らはいつも白い制服を着ていた。