●「続・知られざる日豪関係」(848)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


  “東京急行”を撃滅せよ


 エリック・フェルトは了解して、移動を許可しただけでなく、折り返しリードへ無線封止を指令した。
 日本軍が無線方位探知装置を使うかもしれないと予想したからである。
 翌七日、リードの一行はさらに高く、さらに深い奥地へ向って移動して行った。
 ひどくむし暑く登り道をとるにはやりきれない朝だったが、午後には状況はもっとわるくなった。
 雨が降りはじめ、やがてソロモン群島特有の、ものすごいどしゃぶりになった。
 それでもリード、スライ伍長、巡査、人夫たちは前進をつづけ、すべりやすい小道を木の根やつる草につかまりながら這いのぼった。
 やっとある尾根に着いて、リードはここで一夜をすごそうと決心した。
 視界はゼロだった。