●「続・知られざる日豪関係」(849)
「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
“東京急行”を撃滅せよ
見えるのは雨と雲と霧のたちこめるジャングルだけであった。
彼らは疲れて沈みこみ、自分たちが本当はどこにいるかも分らず、惨めな気分におちいった。
そのうち雨は止んで太陽が顔を出し、雲が消え大気は澄みわたった。
眼下には息をのむような大洋の広がりが東にのびていた。
リードは海上をじっと注視してびっくりした。
水平線に一二隻の日本の大型輸送船が護衛付きで堂々と南東に向って航進していたからだ。
指令ではしばらく無線を封止せよと言っているが、それはこんな場面が出現するとは予想していなかったからだと判断したリードは、すぐに無線機をセットし、アンテナを延ばして送信を開始した。
冒険のリスクは大きすぎはしない。