●「続・知られざる日豪関係」(856)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


  “東京急行”を撃滅せよ


 しかし残りの四隻はなおも前進を続け、一四日未明ガダルカナル沖に着いた。
 田中はやっと海岸へ輸送船を誘導し、荷揚げを開始したが、その時ふたたび空襲が始まった。
 すべてが終ってみると、日本軍はショートランドを出た一万五〇〇〇人の兵力のうち二〇〇〇人を上陸させただけだった。
 一万トンの物資のうち、わずか弾薬二六〇箱と米一五〇〇袋だけが陸揚げされた。
 戦闘というものは少し離れると嘘のように静かなものである。
 空軍の爆弾が田中の船団に雨と降り注ぎ、戦艦同士の壮絶な決闘が起こった一一月一四日、KEN無線局がもっとも興奮したのはレシ―バーに空電を通して監視員の声が届いた時だけであった。