●「続・知られざる日豪関係」(866)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


  “東京急行”を撃滅せよ


 夜になると、別のカヌーが彼を拾い上げた。
 海岸に沿って漕ぎ下り、島の東端を回ると、ニュージョージア島とバングス島を分かつ水路に入った。
 その水路はしだいに狭くなり、一一月二日の夜明け前にジョスリンと送信機をのせた舟は、セギ・ポイントのケネディの拠点に入った。
 ドナルド・ケネディは、ソロモン群島一のラジオ修理者という以上の人物だった。
 戦前から群島西部地区の地区行政官として彼はこの地域の事情をよく知っていた。
 日本軍がやってきた時はサンタイサベル島にいたのだが、セギ・ポイントは地区の中心にあること、そこへの通路がよく防護されているという点で、ずっと好都合だと判断した。
 海図には“暗礁多し”とあって、船員も怖がる危ない航路だったが、彼はどこに水路があるか知っていた。