●「続・知られざる日豪関係」(875)
「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
“東京急行”を撃滅せよ
伝令が伝道所への小道をあえぎながら登って来たのは一九日の午前三時半であった。
事態が分ると、シルヴェスター師はマール・ファーランドの宿舎へ急いだ。
彼はここで負傷者を受け入れる用意をしている間に、医療品をいくらか持ってパラマタに行くつもりだと言うと、彼女は、「それでは全然だめです」、ときびきびした調子で反論した。
彼女は自分で行くと主張し、すばやく救急箱をそろえ、現住民のガイドを四人集め、お茶を一杯のむと午前六時に出発した。
最初はでこぼこしてはいるがよく切り開かれた小道だったが、そのうち道は尽き、彼女は何マイルも何マイルも、岸べの岩をたどりながら歩いていった。
小雨が降っていたので丸っこい石はすべりやすかった。