●「続・知られざる日豪関係」(836)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 サラサラと風にゆれる樹々、きらめくサンゴ海、はるかな暗礁に砕ける波。 空をよぎって行きかう飛行機は、小さな銀色の点となり、何光年もかなたにあるように思えるの…

 ●「続・知られざる日豪関係」(835)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 わたしは歩いて家に帰って、銃をとり、それから射ちます。 かならず射ち殺しますよ」 伝道師のお説教としては異例の言い方だったが、効果は十分にあった。 ケサは走り…

 ●「続・知られざる日豪関係」(834)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 そして神父は必ずくるであろう窮乏と教会の防衛、秩序の維持に備えて緊張した日々を送っていた。 まず彼が直面したのは、現住民の反乱を防止する問題だった。 ケサと…

 ●「続・知られざる日豪関係」(833)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 「わたしの助言にはいつも従いなさい。 夜は明りをつけてはいけません。 ハンター岬やマラボボの日本兵に近づかないように。 わたしたちの敵を助けるようなことを決…

 ●「続・知られざる日豪関係」(832)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 すっかり疲れていたので、現住民の厚意に甘えて連れて行かれた小屋でアシの寝台にころがり、運ばれた魚や芋で腹を満たした。 住民の一人は少し英語が話せたが、近くに…

 ●「続・知られざる日豪関係」(831)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 レスリーはカヌーをそこにおいて、ふたたび歩きはじめた。 助けが近くにあるという思いに胸は高鳴った。 次の日の昼近く、泥道に足跡が見え、まもなく現住民の村落に…

 ●「続・知られざる日豪関係」(830)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 彼はココナツの木にかくれるように移動してカヌーに乗り移り、漕ぎだそうとした途端に兵士たちは少尉を見つけたらしく大声で叫んだ。 引き返すわけには行かないのでカ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(829)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 レスリーはもう一度、注意深くもぐりこんで待ち続けた。 しかし今度は新しい危険が生じてきた。 ココナツの木が兵隊の重みでしだいにたわんで彼自身を押しつぶしそう…

 ●「続・知られざる日豪関係」(828)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 足音がしたので見あげると、一人の日本兵が目を丸くして彼を見下ろしていた。 あわてて飛び出すと兵隊は大声で叫び、二人とも走りだした。 やっと引き離してからレス…

 ●「続・知られざる日豪関係」(827)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 実力行使 やりすごしたあとジャングルの中に分け入ってみたが、遠くまでいくにはあまりに疲れ果てていた。 どしゃぶりで、蟻が手足に群がったが、彼は地面に横になると泥のよう…

 ●「続・知られざる日豪関係」(826)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 6 実力行使 運悪く沿岸監視網の外側に放り出された一人の男がいた。 それは海兵隊第二三一哨戒爆撃飛行中隊のデイル・M・レスリー少尉という若いパイロットだった。 九月二八…

 ●「続・知られざる日豪関係」(825)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 新しい待避壕は飛行場から二〇〇ヤード離れており、二〇〇ヤードばかり安全性を増したわけだが、バッテリーによる電灯と、椅子にする荷物箱もあるという快適さ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(824)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 一〇月二八日、緊張して待つこと一週間にして、なつかしいニック・ウォデルの声が無線で聞こえてきた。 彼とカーデン・シートンはチョイセル島北部のタガタゲラ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(823)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 二六日の未明までにヘンダーソン飛行場奪還を狙った日本軍の第三次攻勢が失敗したことは明白になったのである。 疲れきった勝利者にとってもう一度守り抜いたと…

 ●「続・知られざる日豪関係」(822)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” その壕の上に爆弾が直撃したのである。 奇跡的にも彼は、「首が汚れた」だけで、のんびりした顔付きではい出して来た。 一〇月二四日、いよいよ日本軍の総攻撃が…

 ●「続・知られざる日豪関係」(847)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より “東京急行”を撃滅せよ リードの解釈では、ブーゲンビルのジャングルに奥深く入ろうとするなら誰も白い制服などは着ないだろうから今までは心配していなかった。 だが今回の敵上…

 ●「続・知られざる日豪関係」(821)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 二日後の一三日夜、今度は日本の戦艦が到着した。 七〇分にわたって彼らは一四インチ砲でヘンダーソン飛行場を容赦なく砲撃した。 夜が明けてみると無線局は破壊…

 ●「続・知られざる日豪関係」(820)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” ガダルカナルではヴァンデグリフトと参謀たちが各方面からの通信をつきあわせて、当面の戦況をつかもうとしていた。 メイスンの報告、飛行機の偵察報告、捕獲文…

 ●「続・知られざる日豪関係」(819)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 百武中将自身も九日に出撃した駆逐艦に便乗してガダルカナルに向った。 ブインの背後の丘の上ではポール・メイスンが、ショートランド泊地を埋める日本の大船団…

 ●「続・知られざる日豪関係」(818)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 「一〇四二、戦闘機六貴地へ向う」「一三〇〇、戦闘機六貴地へ向いつつあり」「一四一五、戦闘機一三貴地へ向う」と終日キイを叩いて、彼は情報を送りつづけた。…

 ●「続・知られざる日豪関係」(817)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 最初は連帯規模で、次には旅団単位の部隊が投入されたが、奪回作戦は失敗したので、ソロモンとニューギニアの全日本軍を指揮していた百武晴吉陸軍中将は一個師団…

 ●「続・知られざる日豪関係」(816)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” サイラスはまた、メソジスト派宣教師のA・W・E・シルヴェスター牧師がまだベララベラにいて、島の南端ビルアに住んでいるはずだと語った。 それを聞いてジョスリ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(815)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 乗客はサイラス・レザツニという六マイル南にあるパラマタ村の酋長であった。 敵意どころか、きわめて友好的で、情報をたくさんしゃべった。 「はい、日本人はこ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(814)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” だが今までのところではこの島で敵にせよ味方にせよ誰一人も見かけていないのだった。 彼らがこの問題で頭を悩ましていると、突然二人の現住民がカヌーに乗って…

 ●「続・知られざる日豪関係」(813)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 十月二三日、彼らは一日中大きな送信機にかがみこんで格闘したが、汗が流れるだけで、機械は依然として動こうとしなかった。 はるか上空には日本機の大編隊が轟…

 ●「続・知られざる日豪関係」(812)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” もっと重大な問題は、無線送信を始めるべきかどうかということだった。 頭上には、日本機の大編隊が小さな銀色の翼を光らせて、ガダルカナルに向けスロットを下…

 ●「続・知られざる日豪関係」(811)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” それは嬉しい再会となった。 ベニはすぐチョイセルの日本軍について知っているだけの情報を話してくれた。 島の北端に少数が駐屯しているが、ほかにはどこにもい…

 ●「続・知られざる日豪関係」(810)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 他によい解決法を考える余裕はなかった。 二人はナイフと銃剣で、空気がすっかりぬけるまでボートをズタズタに切り裂いた。 それからぐにゃぐにゃになった残骸も…

 ●「続・知られざる日豪関係」(809)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 「われらその亡骸(なきがら)を城壁に急ぎ運びしとき、太鼓の音はきかれず、とむらいの歌もなかりき」 幸いにも、陰気な物思いにふける時間は短かった。 行程の…

 ●「続・知られざる日豪関係」(808)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 一〇月一九日の夜、グランパスはふたたびチョイセル島の北岸に向い、二〇日の午前一二時三四分、クレイグはナシプシ岬一マイル沖に舞い戻った。 乗組員たちは手…